モーリス・ドニ、そして女のいない「画家が見たこども展」

(6月22日「画家が見たこども展」@三菱一号館美術館 鑑賞記録) 無料の招待券を手にしてなければきっと行かなかった。 三菱一号館美術館のむせ返るような富の気配、都会のど真ん中の、権力と資本の力をありありと示すような場所にあるその建物と建物の周り…

日記(06.12)

拝啓 お元気ですか。 いえ、お元気なことは知っています。わたしは未だに時折あなたのSNSを見に行っています。相変わらずお元気で、時折流行りのジャンルに浮気しつつも、あなたが未だにあのジャンルで活動していること、本を出し続けていることを知っていま…

『魔女の宅急便』と女の人生

かつて『魔女の宅急便』を観た時、幼い自分が何を考えたのか、わたしは思い出せない。 何を考えただろう? ジジが可愛い、キキが可愛い、空を飛べるっていいな、魔女っていいな、という以外に、一体何を考えただろう? おそらく何も考えてなかったに違いない…

ミッドサマー=姥捨山

※『ミッドサマー』ネタバレ全開 数日前、アリ・アスター監督の新作『ミッドサマー』を観てから、わたしだったらそもそも電話に出ないだろうな、ということを考えている。 わたしは電話に出ないのだ。 だからダニーはわたしには電話をかけてこない。ダニーが…

ミッドサマー感想メモ

※ネタバレ全開10分感想メモ ミッドサマーがネタではなく本当にある種の人にとっての救いであり癒しになる映画なんだなと思ったのは、主人公のダニーは彼氏の浮気を知って吐いて泣き喚いていて、そこでコミュニティの女性たちが彼女と共に泣き喚くシーンを観…

狭き門

「では、あなたは、希望のない恋を、そういつまでも心に守っていられると思って?」 「そう思うよ、ジュリエット」 「そして、日ごと日ごとの生活がその上を吹きすぎても、それが消されずにいられるだろうと思って?」 (アンドレ・ジッド,山内義雄訳『狭き…

滑稽と悲惨

印象に残っている映画のひとつに、『ブルーム・オブ・イエスタデイ』という作品がある。 ナチスの戦犯を祖父に持ち、祖父の罪と向き合うためにホロコースト研究をしている研究者の男(トト)と、ホロコーストで犠牲になったユダヤ人の祖母を持ち、ホロコース…

ジョーカーとキリスト

どうして「ジョーカー」初見時のわたしは、アーサーをキリストと見間違えたりしたんだろう? 映画「ジョーカー」を初めて観たときのわたしは、とにかくひたすら美しかった、とばかり言っていた。美しかった。踊りが美しかった、息を呑むほど素敵だった。そん…

ハイヒールと野蛮、母のちいさな足について

わたしの母の足は小さい。 158cmのわたしと、ほとんど変わらない身長(159cm)なのに、母の足はわたしのものよりもずっと小さい。わたしは大体22.5cmか23cmの靴を選ぶけれど、母は21cmの靴を履く。 そして小さな足は、ずっと昔から母の自慢だった。 小学生の…

アイデンティティと言葉

かつて私は、セクシュアリティに関する増えつつある新用語をひたすら検索していたことがある。一般的に知られている「同性愛/異性愛/両性愛」の区別だけではなくて、恋愛感情の向け方と性欲のあり方を切り分けて表現する言葉の数々をそれによって知った。 …

あたかも老人のように

老いた。 言い換えれば、またひとつ年をとった。 さらに別の言い方をすれば、誕生日だった。 誕生日の前日は石原慎太郎の『天才』を読んでいた。 2016年に出た、石原慎太郎が田中角栄になりきって田中角栄の一人称で書いた本である。 正直に言ってあまり面白…

出口のないロジック

出口のないロジック 政治をめぐる「中立」の不可能性は、よく言われるところである。 たとえば本人の意識としてどれほど「中立」だったとしても、ある場面において「中立」を保つと宣言することが、否応なしに特定の立場に利する結果になってしまう、そうい…

性的に他人を害する"力"について

性的に他人を害する力 どれほど“無敵”の美しさ若さを誇っていたとしても、どれほど神秘的で恐ろしげに見えたとしても、どれほど全能感あふれていたとしても、どれほどあらゆる未来の可能性をその手の中に握っていたとしても、それは失われ得る。損なわれる。…

「少女性」に関する覚え書き

「少女」と蚕のモチーフ 最近、『少女邂逅』という映画を観た。 それは「少女性」というものに抱かれるイメージをぜんぶ最高濃度で詰め込んだ作品で、半分とてもとても好きで、もう半分がかなり承服しかねるといった感じで、非常に複雑な気分になった。 この…

“ハッピーエンド”を好きになれない

世の中的に“ハッピーエンド”と呼ばれるものを好きになれないことが多い。 でもそれは"ハッピーエンド"が嫌いというよりも、世の中でハッピーエンドとされるものはだいたいマジョリティの価値観の反映であり「幸せとはこういうものです、こうでなければ"幸せ"…

足はどかさなければならない

世の中には「正しい」ものへの憎悪みたいなものが存在していて、たとえばポリコレを否定したがる人なんかの中には「正しい」ことそれ自体が許せないみたいな言い方をする人がいる。 そういう時にほとんど揶揄のような仕方で用いられる「正しさ」という言葉に…

欲望=奇妙なねじれ

数日前に「お人形遊び」について日記を書いたんだけど、さらざんまいにおけるカパゾンビのありようとわたしの考えていたことは少し近い気がする。 さて、「お人形遊び」とは、好きな関係性や感情のタイプが決まっておりどのジャンルに行っても同じようなカプ…

運命に口づけ

目の前の現実は無数の選択の積み重ねで、何かを選べばなにかを捨てざるを得ず、この現実にたどり着くまでに捨ててしまった無数の可能性があるはずで、こうではない現実もあったかもしれなくて、でもこうなってしまった、どうしてだろう、そういうことを考え…

お人形遊び/叶えられなかった祈り

お人形遊び 以前、好きな関係性や感情のタイプが決まっておりどのジャンルに行っても同じようなカプにはまり同じような解釈をやっている関係性オタクの“業”を友達が「お人形遊び」と表現していて、あまりにもあんまりな表現だったので深く印象に残っている。…